
エクソソーム分離
エクソソームとは
エクソソームは細胞から放出される細胞外小胞の1種です。
エクソソームには、タンパク質、核酸(DNA、RNA)等の生体分子が含まれており、周囲の細胞の機能に影響を与えると考えられています。
エクソソームは癌やウイルス感染等への関与が報告されており、今後の研究で新しい治療方法や診断方法の確立に大きく役立つ可能性が期待されています。
エクソソーム
| サイズ |
40~120 nm |
| 発生由来 |
多胞体(MVB)、エンドリソソームパスウェイ |
| 内包物質 |
タンパク質、DNA、mRNA、miRNA等 |
主なエクソソーム分離手法
| 超遠心分離(UC) |
| 原理 |
沈降係数(サイズ、密度) |
| 収率 |
低 |
| 純度 |
中 |
| 機能性 |
中 |
| 時間 |
4時間 |
| サンプル量 |
大 |
| 変性と不活性化 |
有り(高速) |
| 操作性 |
中 |
| スケールアップ |
中 |
| 長所 |
低コスト |
| 短所 |
労力が必要 |
| 粒子サイズスクリーニングクロマトグラフィー(SEC) |
| 原理 |
流体力学的半径(サイズ、分子量) |
| 収率 |
中 |
| 純度 |
中~高 |
| 機能性 |
高 |
| 時間 |
0.3時間 |
| サンプル量 |
中 |
| 変性と不活性化 |
無し |
| 操作性 |
容易 |
| スケールアップ |
高 |
| 長所 |
再現性が高い、損傷が少ない |
| 短所 |
装置が高額 |
| 限外ろ過(UF/TFF) |
| 原理 |
フィルター径(サイズ、分子量) |
| 収率 |
高 |
| 純度 |
中 |
| 機能性 |
中 |
| 時間 |
4時間 |
| サンプル量 |
大 |
| 変性と不活性化 |
有り(せん断力) |
| 操作性 |
容易 |
| スケールアップ |
中~高 |
| 長所 |
低コスト、柔軟性が高い |
| 短所 |
フィルターの目詰り |
| ポリマー沈殿 |
| 原理 |
溶解度(表面電荷) |
| 収率 |
高 |
| 純度 |
低 |
| 機能性 |
低 |
| 時間 |
0.3~12時間 |
| サンプル量 |
大 |
| 変性と不活性化 |
有り(共沈殿) |
| 操作性 |
容易 |
| スケールアップ |
高 |
| 長所 |
操作が容易 |
| 短所 |
精製が困難、試薬が高価 |
| 免疫親和性(UF) |
| 原理 |
特異的結合(タンパク質マーカー) |
| 収率 |
低 |
| 純度 |
高 |
| 機能性 |
低 |
| 時間 |
4~20時間 |
| サンプル量 |
少 |
| 変性と不活性化 |
有り(精製) |
| 操作性 |
中 |
| スケールアップ |
低 |
| 長所 |
純度が高い |
| 短所 |
試薬(抗体)が高価 |
限外ろ過における従来手法(デッドエンドろ過)とタンジェンシャルフローろ過
限外濾過は分子の大きさに基づいて分離する方法で、操作が簡単で処理時間が速いですが、最大の問題はフィルター膜が詰まりやすいことです。これにより分離効率が低下するだけでなく、コストも増加します。タンジェンシャルフローろ過(TFF)の開発により、フィルター膜の詰まりの問題を大幅に削減することができるようになりました。
TFF を エクソソーム分離に使用すると、収量、再現性、除染能力は、もっとも一般的とされる超遠心分離法よりも優れており、さらに40%以上の時間を短縮できるとされています。また、大規模な量産用途により適しています。
[各方法の詳細な比較と TFF エクソソーム分離のデータ]
エクソソーム分離は複数の分離方法を組み合わせることで、収量と純度を高めることが期待されています。組み合わせる手法により、エクソソームの変性や不活性化等の悪影響を及ぼすことが無いよう注意が必要です。
タンジェンシャルフローろ過システムを用いたエクソソーム分離の例